「・・・何も、俺だけ裸になることはないだろう」

「だって、そうしないと、貴方の大事なところをしっかり蹴れないでしょう?」

「だったら、せめてお前も脱げよ、俺だけ不公平だ」

「私は別にやめてもいいんだけど・・・」

「うっ、わかったよ・・・」

「じゃあ、いくよ」

男の人の大事なところを蹴り上げるのは忍びないけれど・・・。

桃子は右足を後ろに振りかぶり、そしてそのまま勢いよく彼の哲志の股間目がけて蹴り上げた。

ドスッ!!!

彼女のつま先が彼の股間に突き刺さり、鈍い音をたてた。

「ぬうっ!!!」

彼は体をくの字に折り曲げ、両手で股間を抑え、ぴょんぴょんと飛び跳ねた。

つま先に感じた玉のひしゃげる嫌な感触が未だ残っている。

いくらなんでも思いっきりやりすぎたか?

「うわっ・・・、ねえ、もうギブアップだよね?」

桃子は彼の苦悶の表情に若干、罪悪感を感じながら言った。

「まっ、まだ・・・」

「えっ・・・」

「まだ、ギブアップしない・・・」

「うっ、うそ・・・」

彼は膝をガタガタを震わせながらも何とか足を開き、両手を後ろに組んで彼女の正面に向き直った。しかし、その姿はすでに満身創痍。さすがにこれからさらに彼の股間を蹴り上げるのは、少し抵抗がある。

けれども・・・、彼女はここでやめるわけにはいかない。

何せ、この勝負には彼女の処女がかかっているのだから。

 

時は数刻前、桃子は幼馴染の智志に呼び出され、彼の家に向かった。

両親は外出しているのか、家には彼一人だった。

「ねえ、哲志君、話って何?」

「実は折り入って頼みがあるんだ」

「何?」

「俺とセックスしてくれ」

「へっ!? セックスって・・・、哲志君いったい、何を言ってるの!?」

「頼む、こんなことを頼めるのはお前しかいないんだ」

「そっ、そんなこと言われても・・・、第一私たち、ただの幼馴染だし・・・」

 

一体なぜ、彼がそんなことを桃子に言い出したのか・・・、理由は以下の通りだ。

哲志は最近、一人の女の子と付き合いだした。数回デートを重ねるうち、彼女の方からエッチの誘いがあった。何回もデートをしているのに、ちっとも手を出してこない哲志にしびれを切らしてのことだったらしい。

哲志は彼女の誘いに喜んでことに及んだ。及んだのだが・・・。

セックスは愚か、異性との交際も彼女が初めてだった彼はことの最中、あまりの緊張に自分の一物が元気になってくれなかった。そして止む無く初めてのセックスは中断。

「あれ~、疲れてるのかな?」などと意味不明な言い訳をする哲志に、彼女は呆れ顔。

それ以来、別れてはいないものの、彼女と疎遠になってしまった哲志。

 

「つまり、セックスが上手になって、彼女との関係をやり直したいと・・・」

「頼む、本当にお前しかいないんだ」

両手を合わせ、額を地面にこすり付けるようにして哲志は懇願する。

最悪・・・、それが桃子の感想だった。

彼女とうまくいきたいから私の体を貸せって?

ふざけてる。

ビンタの一発でもかましてやりたい、そう思う桃子であったが、気の弱い彼女にはそれはできなかった。

「ごめん、無理だよ。その、私まだ処女だし・・・」

「なんだ、ちょうどいいじゃないか。お互い初めて同士なら、どうってことないだろ?」

「ちょっ、そんなわけないじゃん」

「え~、なんでだよ。俺たちの仲じゃないか、固いこと言うなよ・・・」

「・・・っ」

駄目だこの人、どうしたらそんな発想ができるのか?

私のことをいったいなんだと・・・、彼女の心の奥でふつふつと、怒りが湧きだした。

なんとかして、この男を懲らしめるすべがないモノか・・・。

 

「わかったよ」

「えっ、いいの!?」

「うん、その代り・・・」

「その代り?」

「3分間、私が君の大事なところを蹴り上げるから、3分間、立っていられたら・・・」

「え?」

 

桃子は言った。

自分の大事なものを差し出す代わりに、貴方も私に大事なものを差し出してと。

つまりは、自分だけが損するのは不公平だ。だから、貴方にもそれなりの損をしてもらう。

苦しい思いをしてもらう。

哲志は一瞬渋ったものの、たかが女の蹴りに怖がることはないさ、と条件を飲んだ。

それが後々、大参事になるとも知らずに・・・。